より安全なシステムの実現

#03 では、Currentier がどのようにお客様の「より安全なシステムの実現」に貢献できるのかを説明します。

電流センサー

モーターを制御するための汎用インバーターや、精密位置制御のための AC サーボモータードライブ、作業を自動化するためのロボット向けコントローラー等、多くの制御機器は主に 200V 系や 400V 系の動作電圧に対応するため、高電圧が印加される一次側と制御コントローラーなどが配置される低電圧側 (二次側) の間を、しっかりと絶縁する必要があるという課題があります。また、制御機器の効率化 (IGBT のオン抵抗の低減) とトレードオフの関係である IGBT 素子の短絡耐量低下のため、過電流をより早く検出する必要性が高まっています。加えて、近年は液体・粉塵等が存在するという産業用機器にとっては悪環境の元でも安全に使用したいというニーズが出てきています。

Currentier

Currentier は以下の 3 つの特長にて、上記市場ニーズに対応し、より安全なシステムの実現に寄与する事が出来ます。

  1. コアレスで世界初 沿面・空間距離 8mm 以上を実現
  2. 高速応答と過電流検知機能
  3. 低発熱による機器の密閉度アップ・ファンレス化の実現

1. コアレスで世界初 沿面距離・空間距離 8 mm 以上を実現

絶縁の基準として、UL や IEC などの認証機関が定めている規格が存在し、例えば北米の産業用機器では、UL61800-5-1 に対応した絶縁をシステムで実現することが求められます。対応するための一つの指標として、電流センサーや絶縁アンプに代表される絶縁素子の「沿面距離・空間距離」をある一定数値以上確保しなければいけません。
例えば、ある条件下で 400V 系のシステムに対応するためには、沿面距離と空間距離を 8mm 以上確保する必要があります。これらの要求事項を満たすためには、以下のような課題があります。

課題1:
沿面距離・空間距離が 8mm 以上確保できる電流センサーはコア付き電流センサーやカレントトランスデューサーしか存在しなかったため、サイズとコストが増大する。
(*1)

課題2:
絶縁アンプを使用する場合、周辺部品数が増えるため、コストと基板面積が増大する。
(*1)

課題3:
絶縁アンプを使用する場合、シャント抵抗の発熱による放熱面積の増大と、設計工数が増大する。
(*2)

Currentier は、コアレス電流センサー IC で世界初となる沿面距離・空間距離 8mm 以上を実現し、図1 に記載のあるように UL/IEC 規格に準拠しています。高い絶縁を実現しながら、かつ上記のサイズ、コスト、設計工数の問題をすべて解決することができるため、世界中の産業用機器で採用が進んでいます。

(*1) #01 システムの小型化 を参照。

(*2) #02 設計工数の削減 を参照。

図 1 Currentier シリーズの沿面距離/空間距離 図 1 Currentier シリーズの沿面距離/空間距離

2. 高速応答と過電流検知機能

絶縁に加えて安全なシステムを実現するために重要となるのが、高速応答性と高電圧側での過電流検知機能です。

1. 高速応答性

インバーター制御をするための IGBT は、高効率化が進んでいますが、一般的にこの効率とトレードオフとなるのが、短絡時に破壊に至るまでの時間を表す ”短絡耐量” です。システムの高効率化を実現していくためには、過電流が流れた際により短時間でしっかりとシステムを止める必要があります。特に、高速周波数で駆動する次世代パワーデバイスである SiC/GaN においては、さらに短時間でシステムを止めることが求められ、Currentier の高速応答性が有効となります。

例えば、相電流部で過電流検出をする場合、従来のシャント抵抗+絶縁アンプ+コンパレータの方式では応答速度が十分ではないため、過電流が流れそうな時を予測してシステムが壊れないよう十分マージンを取った設計を行います。結果として、本来必要のないタイミングでシステムを止めたり、容量が大きく壊れにくい部品を使って設計します。

Currentier は AKM の超高感度化合物ホール素子技術を応用し、応答速度 1usec (仕様 typ 値) という高速応答を実現しており、過電流を予測ではなく直接正しく測定する事が可能です (図2 N=1 の測定値は 0.6usec) 。これにより、システムのダウンタイム短縮や適切な容量の部品の採用が可能となり、システム小型化や低コスト化と同時に、安全なシステムを実現することができます (図3) 。

図 2 応答速度 (Currentier シリーズと他社品との比較) 図 2 応答速度 (Currentier シリーズと他社品との比較)

2. 高電圧側での過電流検知機能

Currentier は、高電圧側となる一次導体と低電圧側となる ASIC・ホール素子が物理的に接しておらず、沿面距離・空間距離 8mm を確保しているため、回路の高電圧側 (ハイサイド) に実装しても安全性を確保できます。

IPM において過電流検知機能付きタイプも世の中には存在しますが、回路の低電圧側 (ローサイド) での検知となり、短絡経路によっては保護されない回路が生じる可能性があります。高電圧側で実装可能な Curreniterを使用することで、より安全性を高めることができます。

Currentier CZ3A シリーズでは、しきい値調整可能な二系統の過電流検知機能を搭載しております。そのため、相電流部に置くことで、トルク制御のための電流を検出しながら、同時に追加部品なく、過電流検出を行うことが可能です (図4) 。

図3 過電流検出ブロック図 ( 左 : 絶縁アンプ 右 : Currentier ) 図3 過電流検出ブロック図 ( 左 : 絶縁アンプ 右 : Currentier )
図4 Currentier CZ3A0 シリーズのブロック図 図4 Currentier CZ3A0 シリーズのブロック図

3. 低発熱による機器の密閉度アップ・ファンレス化の実現

近年産業用機器において、液体・粉塵等が存在するという劣悪な環境であっても、より安全に、より低い故障率で使用したいというニーズがでてきています。

例えば、食品工場でもロボット導入事例が増えていますが、異物混入対策など、衛生面への対応が必要不可欠となります。そのため、防滴仕様にして洗浄可能にするケースがあります。液体・粉塵に対する保護の規格としては IP 規格 (図5) がありますが、水に対する IP*5 をうたうには、全方向からの 12.5 L /分の墳流水に対して 3 分間耐えられることが必要です。そのため、機器の密閉度を高め、水の侵入を防ぐ必要があります。また、粉塵からの保護 IP5* を満たすにはファンレスにして機器の内部に入る粉塵を一定以下に抑える必要があります。

Currentier は、一次導体が低抵抗であることから低発熱となり ( *3)、機器の密閉度アップやファンレス化を実現可能です。結果として、より高い IP 規格取得とそれに伴う製品の高付加価値化に貢献することができます。

(*3) #01 システムの小型化 を参照。

図5 IP 規格 図5 IP 規格

まとめ

AKM のコアレス電流センサー Currentier は、下記の実現により安全なシステムの構築に貢献します。

  • 沿面距離・空間距離 8 mm 以上のパッケージにより UL61800-5-1 に準拠
  • 高速応答による過電流検知が可能
  • 機器の密閉度アップ・ファンレス化の実現により、より高い IP 規格取得が可能

 

以下のページで UL61800-5-1 に準拠した沿面・空間距離を算出するツールをご紹介しています。お客様のご利用条件に合わせたシミュレーションが可能です。(ご利用には MyAKM 登録が必要となります。)

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