当社およびエア・ウォーター北海道㈱は、陸上養殖事業に参入することを決定し、そのモデルプラントを北海道東神楽町に建設、サーモンの養殖技術・高効率飼育の確立を目指す「杜(もり)のサーモンプロジェクト」を開始しますのでお知らせいたします。また、これに先立ち、地域活性化ならびに養殖事業を基軸とした農商工振興を図るため、東神楽町と包括連携協定を締結しました。

1.背景と目的

当社グループの地域事業は、多様な事業領域を活かし、自治体・大学・地域産業を担う企業などと連携し、地域の社会課題解決に貢献する新事業の創出に取り組んでいます。


豊富な水産資源を有する北海道は、全国で約2割の漁業生産量を占める一方で、漁獲量の減少や漁業従事者の減少・高齢化といった課題があり、安定的な漁業モデルが求められています。こうした中、一定の質や量の生産を実現することができる養殖業が広がっており、特に、魚介類の中で需要の高いサケ・マス類の養殖が事業化されています。一般的な養殖モデルである海面養殖は、海水温の上昇や自然災害の影響を受けやすいことから、当社では、自然状況に左右されにくく環境負荷の低い「陸上養殖」を行います。


当社グループは、養殖時に不可欠な酸素、LPガス等のエネルギー、人工海水等の消耗品を取り扱っていることに加え、遠隔監視・鮮度保持・食品分析等の技術や、道内各地に拠点を有する物流ネットワークを有しています。こうしたことから、「杜のサーモンプロジェクト」として養殖プラント設計から設備の運転、メンテナンスまで一貫したパッケージで展開する「陸上養殖プラットフォーム」の確立に取り組みます。


技術面では、寒冷地に適した陸上養殖を開発するとともに、飼育環境をIoTによりデータ管理することで、低コスト化、省力化等の技術開発を目指します。2年後を目途に、高品質なサーモンの出荷を実証した後、本養殖システムを各自治体や漁協、外食チェーン店、食品商社等へパッケージ提供し、収益化するビジネスモデルの構築し、食糧自給率の向上に貢献してまいります。


なお、本モデルプラントにおいて生産された養殖サーモンは、生産地においてブランド化し、周辺の飲食店やふるさと納税の返礼品などで活用する予定です。また、地域の教育・研究機関とも連携し、サケの放流学習や食育学習等を通じて、環境保全やフードロス等のSDGsの達成に向けた取り組みを進めます。

2.モデルプラントにおける実証に関して

本施設では、高品質な美味しいサーモンを作るための生産技術やノウハウの確立を行います。
 ①寒冷地の陸上養殖で育成する高品質なサーモンの飼育・出荷
 ②最適な酸素供給、遠隔監視等の陸上養殖関連ツールの開発
 ③淡水、海水の排水利用、処理技術の開発
 

3.モデルプラントの概要

本モデルプラントにおいては、飼育水をフィルターでろ過して水をリサイクルする半密閉循環式を採用します。飼育する水に酸素を溶かすことで、成長を促進することができるため、自然界では出荷まで3~5年かかるものが約2年で出荷できるようになります。飼育する魚は全雌三倍体(※)のニジマスを予定しており、人工海水で飼育可能なウニなどと複合飼育を行います。併せて、養殖排水を植物が栄養として吸収するアクアポニックス(水耕栽培)も行うことで、サステナブルなフード事業に取り組みます。
※卵を持たず、成熟しない魚のこと。

 所在地 :北海道上川郡東神楽町字志比内73-3
 敷地面積:4,290㎡
 排水方式:半密閉循環システム
 水槽数 :飼育水槽4台、仕上げ水槽4台
 出荷量 :30トン/年 (12,000尾 相当)
 

4.エア・ウォーターグループと養殖事業の関連性

当社グループには、養殖事業を行う上で必要な要素を多数有しており、これらを組み合わせパッケージ化することで、「陸上養殖プラットフォーム」の提供ビジネスに取り組みます。
(例)
 ・酸素供給および発生装置や付帯設備の設計・施工
 ・LPガスや天然ガス等のエネルギーや人工海水などの消耗品の安定供給体制
 ・農業・食品部門で培った栽培管理・鮮度保持・分析技術の活用
 ・全道各地に拠点を有する営業・物流ネットワーク機能
 ・水処理プラント設備の開発・設計、資源循環型のエネルギー供給装置の開発 など

ご参考:陸上養殖について

陸上養殖は、陸上に人工的に創設した環境下で養殖をすることであり、養殖する魚類等が生育するのに適した水温の豊富な水源が必要となります。主な方式としては、かけ流し方式、半閉鎖循環方式及び完全閉鎖循環方式の3種類があります。


かけ流し方式は、海水や地下水等を水槽に汲み入れて、そのまま排水する方式であり、イニシャルコストは最も安いものの、水源の確保や養殖に適した水温の管理をクリアする必要があります。また、大量の排水により、他の方式と比較すると環境負荷が大きくなります。半閉鎖循環方式は、水槽内の水の一部を浄化処理してリサイクルすることで、水の使用量や排水を抑え、水温管理もしやすくなりますが、殺菌や生物ろ過等を行う浄化設備に費用がかかります。完全閉鎖循環方式は、水の完全リサイクルであり、最も環境負荷のかからない方式ですが、水の浄化設備に係る高度な技術や、電気代、酸素代等の費用を要します。


本モデルプラントにおいては、半閉鎖循環方式を採用し、既存事業とのシナジーにより北海道における陸上養殖需要の開拓を目指して事業化に向けて取り組んでまいります。

 

水産庁「養殖業事業性評価ガイドライン ~ 陸上養殖 ~ 令和3年(2021 年)4月」より抜粋。一部編集。

当社グループは、国連サミットで採択された2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを進めています。今回の取り組みは、下記の開発目標に該当します。

2.飢餓をゼロに
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
12.つくる責任 つかう責任
14.海の豊かさを守ろう
17.パートナーシップで目標を達成しよう

【本件に関するお問合せ先】
エア・ウォーター株式会社 広報・IR 部 E-mail:info-h@awi.co.jp
担当:中井・石井 TEL:06-6252-3966 〒542-0081 大阪市中央区南船場2丁目12番8号