耐衝撃性を向上した炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)~ハイブリッド長繊維ペレット(H-TLP)~

ハイブリッド長繊維ペレット「H-TLP」は、炭素繊維と柔軟な異種繊維を併用(ハイブリッド)することにより、炭素繊維の高強度・高剛性を維持し、且つ耐衝撃性を向上した射出成形用の炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)です。

特長

1.長繊維ペレット(TLP)について

一般的に炭素繊維強化熱可塑性樹脂の耐衝撃性は、炭素繊維の繊維長に依存する傾向にあり、繊維長が長いほど耐衝撃性は高まります。そのため、東レはこれまで長繊維ペレット「TLP( Toray Long carbon fiber reinforced Pellet)」を開発し、自動車部品や家電部品など高強度と耐衝撃性が求められる用途を中心に、ABS, PP, PA, PPSなどの各種樹脂をマトリクスとした材料を展開して参りました。(図表1)

ただ、炭素繊維は硬いため射出成形時に折損し、成形品中で十分な繊維長を維持することが難しく、耐衝撃性の更なる向上には限界がありました。

図表1

2.ハイブリッド長繊維ペレット(H-TLP)について

ハイブリッド長繊維ペレット「H-TLP」は、長繊維ペレット「TLP」に炭素繊維よりも柔軟な異種繊維を併用することで、炭素繊維強化による高い強度や剛性を維持しながら、耐衝撃性を大幅に向上したグレードです。

柔軟な異種繊維は射出成形時に折損しにくく、成形品中で炭素繊維よりも2倍以上長く残存するため、衝撃時に異種繊維の引き抜きまたは破断による衝撃エネルギーの吸収を可能としました。それにより、炭素繊維で高強度・高剛性、異種繊維で高衝撃と機能を分離して効果を発現しています。(図表2)