1. 素材メーカーから見たビジネスの全体像
半導体とは、電気をよく通す「導体」と、ほとんど通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ材料であり、電気の流れを制御できることが最大の特徴である。シリコン(Si)を代表とする半導体材料を用いてトランジスタや集積回路(IC)が製造されており、素材業界では「半導体」という言葉が実質的に電子部品や半導体チップそのものを指す場合も多い。
半導体はスマートフォン、サーバー、データセンター、自動車、産業機器などあらゆる電子機器の基幹部品となっている。世界的なデジタル化や生成AI需要の拡大を背景に市場は成長を続けており、JETROが紹介するWSTS予測では、世界半導体市場は2026年に1.5兆ドル超(前年比90%増)へ拡大する見通しである。
半導体にはいくつかの分類方法がある。微細化技術による分類方法「先端半導体(2nmなど/スマートフォン、サーバ向け)」と「レガシー半導体(28nmなど/車載半導体、家電向け)」や、用途による分類方法「ロジック半導体(CPUなど)」「メモリ半導体(記憶)」「パワー半導体(電圧制御、EVなど)」「アナログ半導体(センサーなど)」などがあり、文脈に合わせた正しい理解が必要である。
半導体の製造工程は、ウエハ上に回路形成を行う「前工程」と、パッケージング(切断・実装・封止)を行う「後工程」に大別される。素材メーカーは半導体ウエハそのものだけでなく、製造工程で利用するフォトレジスト、シランガス、高純度薬液、CMP材料、ペリクル、封止材、接着材、放熱材、基板材料など、多数の機能材料を供給しており、半導体産業を支える重要な役割を担っている。
2. 最近のビジネス動向
半導体製造領域では、処理の高速化と低電力化を目的とし、半導体の微細化が進められてきた。特に近年AIの急速な普及で、データセンターのサーバーは大量のデータを並列で処理する必要がでており、更なる微細化が必要となっている。素材メーカーは、半導体製造メーカーが要求する微細化プロセスに追随できることが重要となる。また微細化技術を補うために、先端パッケージ技術によるチップレット実装やHBM(High Bandwidth Memory)に代表される積層型半導体・先端パッケージ技術への注目が高まっており、素材メーカーが実現を支援する製品開発を進めている。
サーバーの消費電力増加に伴い、熱対策が大きな課題となっている。このため、熱伝導性フィラー、放熱シート、封止材、TIM(熱界面材料)など、放熱性能を高める材料への需要が拡大している。
3. 主な素材メーカー
信越化学工業株式会社
シリコンウエハで世界トップ級。加えてフォトレジストやマスクブランクスも手掛け、微細化を支える素材群を広く保有する。
JSR株式会社
フォトレジストの世界大手。ArFフォトレジスト、EUV関連材料、次世代レジストなどを開発し、先端半導体の微細化・高集積化を支える。
東京応化工業株式会社
フォトレジスト大手。最先端のEUVレジストの他、高純度化学品、先端パッケージ向け後工程材料も保有する。
富士フイルム株式会社
先端ロジック・メモリ製造で不可欠な研磨・洗浄技術が強み。CMPスラリー、エッチング液などの前工程材料を展開。フォトレジストも扱う。
株式会社レゾナック
CMPスラリー、封止材、液状封止材(アンダーフィル)、配線板関連材料など後工程材料を広く保有。
住友ベークライト株式会社
半導体封止材の世界有力メーカー。高耐熱のエポキシ封止材や液状封止材などを展開し、AI向け先端パッケージの高集積化・高信頼化を支える。